国際住宅建築都市産業協会 SERIES INTERVIEW

WOODRISE 2021 BUSINESS SESSIONを語る

北米・豪州委員会の活動と
IHA議長としての抱負について

JUBH 北米・オセアニア担当部長伊東 勉

会長イメージ
2022年9月28日 取材

JUBH北米・豪州委員会が果たす役割
JUBHが運営する3つの委員会のうちの1つ「北⽶・豪州委員会」では、全⽶ホームビルダーズ協会(NAHB)が事務局を務める国際住宅協会(IHA:International Housing Association)への参画を通じて世界の加盟各国が抱える住宅に関する悩みや課題を共有し、議論を⾏っています。同時に、豪州住宅産業協会(HIA:Housing Industry Association Limited of Australia)と覚書(MOU)を締結し、それぞれの課題や新たな技術などの情報共有を図っています。これら2つの協会との活動を通じて国際的な建築・住宅産業の発展を⽬指しています。
私が現職に就く経緯は、JUBHが設⽴される前に⼀般社団法⼈住宅⽣産団体連合会(住団連)で国際部⻑として、IHAやHIAとの交流に携わっていたことに端を発します。その後、住宅産業に関連する国際交流を出来るだけ統⼀した団体として2018年にJUBHが設⽴し、それまで担当していたIHAへの参画やHIAとの交流をそのまま住団連から引き継ぐ形で「北⽶・豪州委員会」の統括を任されることとなりました。建築資材メーカーであるYKK AP株式会社からの出向者である私は、住宅に関する専⾨知識を習得することが必要となりました。 また、住宅メーカーからの出向者が多い中、建築資材メーカーからの出向者である私がどこまでやり遂げられるのか、模索しながらも奮起して取り組んでまいりました。


世界の住宅問題と向き合う
IHAの議長に就任して
国際住宅協会(IHA)は1984年に設⽴され、2022年9月現在、14カ国16団体が加盟する国際的な団体です。先進国、途上国などを含めて、各国の様々な住宅や住宅建設に関わる情報・課題を共有し協議を重ねて来ており、その結果は政府への政策提⾔などにも活かされています。
共通する課題だけでなく、世界中から集結した各国住宅関連団体が持つ異なる⽂化や価値観などに触れることで新たな驚きや参考となることが数多くあります。例えば、多くの国で建築のDX化が推進されている昨今ですが、その初期費⽤をシビアに捉えて導⼊するメリットを感じていない国もあります。また、日本では住宅ストック数が世帯数よりも多く、量的には充足しているものの、性能面や利便性等諸般の理由で住み手が見つからず、放置された空き家の増加が課題となっています。住宅供給不⾜が深刻な諸外国には、こうした事情はなかなか理解されないと感じています。
今年2⽉にアジア圏からのIHA加盟国としては初めて、IHAの議⻑に就任いたしました。議⻑就任後初となる中間総会はマレーシアのクアラルンプールで開催されました。中間総会では7つある作業部会において発言する必要がありますが、各国の議論に対して経験則でのコメントで乗り切った部分もあり、まだまだ勉強不⾜であることを実感しました。住宅取得⽀援作業部会の例でいえば、関連団体および協会が主体となって住宅取得⽀援を策定・運営している他外国の意⾒に対し、⽇本は少し事情が異なり、政府や自治体が独⾃で⾏っている施策や取組を紹介するだけとなり、中々⻭⾞が嚙み合わない部分もあります。7つの作業部会全てに精通して各国の様々な意⾒に対してコメントができるよう、事務局であるNAHBのサポートも仰ぎながら精進して参りたいと思います。
また、今後の取組みとして、新たな加盟国への働きかけや、関連機関・事業体との交流活発化を⾏っていきます。それと同時に、アジア初の議⻑として、⽇本ならではの問題提起やテーマ拡散も積極的に⾏っていきたいと考えています。

2022年9月IHA中間総会(マレーシア)にて会議参加者と記念写真



技術交流や外国政府への働きかけで
更なる発展を⽬指す

豪州住宅産業協会(HIA)とは、2019年に締結した覚書に基づき、相互協⼒の⼀環として訪問団の受け⼊れ・派遣を実施していきます。2023年はHIAからの訪問団を受け⼊れ、住宅供給の⾯で⼤変興味を⽰している中低層集合住宅の⼀連の⼯程や、国産材の新たなサプライチェーンマネジメントを試⾏している事業者などを視察する予定です。その後、2023年度中には⽇本からの訪問団を派遣します。こうした互いの住宅産業にプラスとなるような視察を継続して実施することで、建築・住宅産業の発展を⽬指します。
こうした技術交流のほか、諸外国における建築・住宅産業に関する課題に対し、外国政府や関連団体・協会などへの要望提出も⾏っています。例えば、ある海外進出先の国が外国資本に対し出資規制を敷くことで、その国で事業を行う海外現地法人に対して税⾦が上乗せされたり、⼟地の取得が割⾼になったりするケースがあります。このような課題に対しては、1社としてではなく、団体として交渉を行う事で担当する行政や関連団体へ強い要請を⾏うことができます。
海外で事業展開するための課題解決や運営⽅法など、これまでJUBHが蓄積してきたノウハウや各種情報を会員企業へ提供し、協会全体で技術交流や諸外国への働きかけを進めていくことで、更なる建築・住宅産業の国際的な発展を⽬指して参りたいと思います。

2023年3月八芳園で開催されたHIA訪日視察団歓迎式典にて(後日撮影)

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